高額オンラインサロン:価格設定や価値に関する講師の主張は妥当か
インターネット上では、「夢を叶える」「成功するノウハウ」といったキャッチコピーを掲げる高額オンラインサロンが増加しています。
『ぼったくり』『詐欺』という評価を、『価格に見合った価値提供が得られない』という意味と定義した場合、もちろん、巷のオンラインサロンのすべてが価格に見合わないものではないと思います。オンラインサロン運営にも、コンテンツ作成、メンバー管理、事務連絡等、様々の経費やマンパワー、知的財産が必要だからです。
しかし、その中にはオンラインビジネス業界特有の価値観や消費者の無知を利用し、クレームの際に一方的な主張を展開する講師も実際に存在します。だいたいは人間関係や返金に関するトラブルとみられますが、この時法的には問題がなくても、倫理的に疑問を抱かざるを得ない場合も少なくないようで、参加者に大きな金銭的・精神的損失をもたらします。
この記事では、そのような問題のある主張をする高額サロンの特徴を挙げ、リスクを回避するための対策をお伝えします。
オンラインサロン界隈にありがちな特徴・価値観
特徴1:入会金、月額料金が高額
例えば、入会金なら数万円から数十万円、月会費であれば数千円から数万円というような額の請求があるにもかかわらず、提供される内容が薄すぎるとすれば、参加者はサロンの価値と値段が釣り合わないと感じるでしょう。
よくあるパターン:価格に見合わない、薄いコンテンツ
ネットで手に入る内容をまとめた動画やPDF教材
- 抽象的なマインドセット論が中心の、実用的ではない教材。
- 高額な割に、随時サポートがない。
- 「〇〇に学ぶ成功の秘訣」など、漠然とした内容の教材
- 月額5万円のサロンなのに、YouTubeで無料公開されている内容をまとめただけの教材が提供される。
- 特別セミナーといっても「月に1回の主催者ライブ配信が15分だけ」というケースも。
内容は無料で手に入るレベルであったとしても、見やすいようにまとめなおして整理してある、PDFでダウンロードできる、決まった期間マンツーマン・少人数で質問に答えてくれるなど、付加価値はあるかもしれません。
しかし、その付加された内容はその講師独自の価値があるものか、内容に比して講師自身の実働時間はどのくらいか、講師自身が利益を得すぎていないか(安すぎる価格で下請けを使い「仕組化」「自動化」「行動する人が正しい」などと言っていないかという視点も含め)など、目安になるかもしれません。
主催者や参加者が交流する専用チャットグループ
- ほとんど放置された、ネットの掲示板と変わらない話題のチャットグループ。
特徴2:講師の実績が不明瞭、プロフィールが詐欺まがい
サロンの主催者は「成功者」や「インフルエンサー」を名乗ることが多いですが、その成功体験や実績の信憑性が疑わしい場合があります。
- 「数億円稼いだ」と謳っているものの、具体的な証拠や説明がない。
- 過去に別のビジネスで失敗している経歴を隠している。
よくあるパターン:経歴・実績を大きく見せるプロフィール
- 「●●(外資系企業・大手企業)で●●(業務内容)の経験がある」というが、実態は非正規雇用だった。
- ネットで検索しても、公的で明確な情報が出てこない。
- 「企業研修の実績多数」とうたうランディングページ(簡易ホームページ)に写った人物がよく見るといつも同じ。
特徴3: 自己啓発・FIRE・起業・AIなど、トレンドのテーマで集客
「副業」「起業」「ライフデザイン」「自由な生き方」といった言葉で消費者の興味を引きつけます。特に、SNSや広告を活用して「簡単」「誰でもできる」というメッセージを強調する手法がよく見られます。
よくあるパターン:魅力的な宣伝文
- 「これさえあればあなたも起業家に!」
- 「たった1日10分で月収50万円を実現した方法」
これらの広告は魅力的ですが、実際には内容が薄く、広告と現実のギャップに驚く参加者が少なくありません。
ぼったくりサロンの具体的な手口と、なぜそれが問題なのか
問題1: 「コミュニティ」「成功者マインド」といったあいまいなものに価値をこじつける
例えば、「志を共有する仲間と出会える」「成功者との繋がりが得られる」といった、あいまいな無形の価値をサロンの最大のセールスポイントとしてPRする講師がいます。
しかし、本当にそこまでの高額を払わないと得られない人脈なのか(一時の感情の高ぶりで購入してしまったものの、ビジネスのつながりが得られる場所は、他の選択肢もあった)、そこまでオンリーワンなのかという疑問が、冷静になってからわいてくる場合があります。
例えば、その「つながり」のフタを開けたら、実態が以下のようなパターンだった場合です。
よくあるパターン:主催者と交流できない・放置されたグルチャ・マルチの温床
- 実際に繋がれるのは、主催者ではなく他の参加者のみ。
- チャットグループが設けられるものの、活動はほぼ放置されている。
- そのコミュニティのビジネスモデル自体はマルチではなくても、マルチ目的の人がたくさんいて放置されている
問題点
「主催者と交流できる」とされていたのに、実際には事務スタッフが運営するチャットに数千人が参加しているだけで、主催者の投稿は数か月に1回。一応のコンテンツはあるものの、評価しづらい性質の価値であり、ある意味、どうとでも主張できる。
時に主催者やその身近な人(主要メンバー)も含め、オフラインのお茶会などが開かれるが、SNSなどで成功を演出できるのは集合写真の中心に写った主要メンバーのみで、他のメンバーは搾取されている構造。
問題2: 成果が出ない場合、責任をすべて参加者に押し付ける
サロンに参加した結果が期待外れでも、運営側は「成果が出ないのはあなたの努力不足」と主張し、責任を参加者に押し付けます。これにより、消費者はクレームを申し立てづらくなります。
自己啓発・スピリチュアル的な主張を絡ませ話をうやむやにするパターンや、ノウハウの再現性以前にコンテンツが薄い、サポートが乏しいなどのパターンがあります。
よくあるパターン:マインドの問題にする、能力・行動不足の結果にする
- 「成果を出すには3年は努力が必要です」
- 「考え方を変えれば成功しますよ」
問題点
これにより、参加者は「自分に原因がある」と思い込み、さらに高額なプランを購入してしまうケースもあります。また、自己責任論を押し付け罪悪感を植え付けることで、被害者が声をあげづらい状況を作ります。
自己啓発や投資、起業、成功者コミュニティなど、この手のオンラインサロンは一部の人々からは冷ややかに見られています。その状況も相まって、被害者は理解してもらえません。
しかし、仮に周囲からの印象が冷ややかであったとしても、被害者が悪いのではありませんし、まして、倫理観のないマーケティングを行っている講師当人が被害者に責任転嫁してよい理由にもならないでしょう。
問題3: クーリングオフに対応しない・複雑な返金特約
多くのオンラインサロンは「デジタルコンテンツ販売」として、消費者が契約をキャンセルしやすい制度であるクーリングオフを回避する設計をしています。
よくあるパターン
- 「規約に同意した時点で返金は不可」と一方的に主張される。
- 「内容に不満があれば自己責任」として対応を拒否される。
問題点
個別の状況によって、本当にクーリングオフを適用しなくてよいパターンなのか、消費者センターや弁護士など、専門家に確認することもよいでしょう。
悪意の有無、故意かどうかによらず、一方的に、また、無知により、講師がそのように主張している場合もあります。今は、オンライン商材にまつわるトラブルに理解があり、強いとうたっている法律の専門家も増えています。
まとめ:オンラインサロン側の主張やネットビジネス界隈の価値観を鵜呑みにしない
オンラインサロンは一見魅力的な学びの場ですが、その一部には倫理観の欠如した運営が存在するのも事実です。これから参加を検討する際は、以下の点に注意しましょう。
- 主催者の背景や提供内容を慎重に調査する。
- 提供されるコンテンツと類似サービスの世間的な相場に対し、費用が妥当かどうか、冷静に見極める。
- 広告や口コミだけで判断せず、不信感や疑問、実害があれば専門家に相談する。
誇大広告や夢物語に踊らされることなく、自身を守るための情報リテラシーを磨いていきましょう。そして、疑問を感じたり、万が一トラブルに巻き込まれりした際は、まずは消費者問題や法律の専門家に相談し、裏を取ることを推奨します。