スキルがない講師がネットで事業を拡大する理由
高度な知識がなくても、誰でもビジネスを始められる現代。
起業に挑戦するハードルが低くなった一方で、実力も実績もない講師でも、ネットを使えば事業拡大をできる環境が整っている時代でもあります。
小手先のマーケティングで誇大広告を打ち、初心者を騙して粗末なコンテンツを売りつけることで事業資金を集め、そのお金をスキル習得や設備に充てるのです。
この手の講師は、『スモールスタート』という業界独自の概念をしばしば引き合いに出します。
粗悪な商材の優良誤認による売上を原資に、勉強したり設備を揃えたりして、あたかも最初からスキルがあったかのように装うのです。
さらに、粗悪なコンテンツの売上も、短期間で高額の収入を得たとアピールすることで、実績にカウントします。
優良誤認で高く売り、その売上で取り繕うことを繰り返して、事業を拡大していくというわけです。
こういう手口が横行する背景を、インターネットやSNSの特性、ネットビジネス業界独自の風土などの切り口から、解説します。
オンラインを活用したハリボテビジネスの問題点
オンラインの性質を活用し、立ち上げ初期のビジネスを加速させる手法自体は、もちろん悪いことではありません。ただし、冒頭でお話した『ハリボテビジネス』については、疑問を感じます。
誇大広告により印象操作し、特に初心者に他の選択肢を検討させないまま自身の商材購入を即決させる。
ましてこれを実際のスキル習得のための資金に充てることは、倫理的に問題があると言えるでしょう。
1. ネットメディアの即時性・可視性を利用した印象操作
オンラインビジネスでは、情報の即時性と可視性が大きな強みとなります。SNSやブログ、ランディングページを活用し、短期間で大量のコンテンツを発信することで、素早く顧客や潜在顧客にアプローチできます。
実績が最初に少しできれば、うまく演出してアピールすることで、ビジネスを加速できるのです。
「限定セミナー」「先着◯名」といった感情を煽って判断力を鈍らせるセールスを行い、自身の商材を即決させます。
2.スキルが高いと見せかけることが簡単な時代
生成AIや簡易デザインツールを使えば、お金をかけずにそれなりのコンテンツを誰でも作れる時代です。
最近のツールは本当に簡単で、パソコンやスマホの基本操作が分かる人なら誰でもできるほど敷居が低いものです。
しかし、知識格差を悪用することで、「専門性が高い」「高度な技術を持っている」と、デジタルスキルを偽装することができます。
実質的にはツールの存在を知っているか否かという差しかないのですが、このことすら「自ら情報を取りに行くビジネスマインド」という口上で、自分を大きく見せる材料として利用します。
また、この手の講師は、AIで作成した画像や動画を好んでブランディングに使うことがよくあります。ただ出力したままのAI素材を使うと、知らない人は高度な技術と実績があると錯覚してしまいます。ずるい講師は、そうやって消費者が誤認したことを良いことに、黙ってその恩恵に預かるのです。
3. SNSと社会的証明を活用する
SNSはコネクションを可視化し、時に他人を自分の権威づけに利用することもできる強力なツールです。オフラインで会い、その場で話をすればごまかしがきかないようなことも、SNSでは取り繕うことができます。
また、集合写真や顧客の評価を示すことで、自身の影響力を演出することができます。見慣れた人から見ればすぐ分かる小細工ですが、ここにコピーライティングやマーケティングのテクニックを組み合わせてしまえば、印象操作をすることはたやすいのです。
一度自身を大きく見せることに成功すれば、ビジネスを成長させる(成長しているように見せかける)ことができます。
4. オンラインビジネス業界独自の風土を利用
オンラインセミナーは、物理的な制約がないため、誰でも簡単にセミナーを開催できる環境が整っています。
この特性を活用することで、エンタメ的な要素を取り入れて、短期間で参加者を集め、華やかに見える成功事例を作り上げることが可能です。
特に、「誰でもできる簡単なメソッド」や「短期間で結果が出る」というフレーズは、参加者に強くアピールしやすく、短期的な成功を印象づけるために有効です。
5. 短期的な成功体験を提供する
初期段階では、PDCAサイクルを回しながら、参加者に「即効性のある成功体験」を提供することができます。このような短期的な成果を強調し、次第に信頼を積み上げていく戦略を取る講師が多いのが現実です。たとえば、「すぐに使えるスキル」や「短期間で結果が見える方法」を提供することで、顧客の満足度を引き出し、それをSNSや口コミで広めることができます。
6. 過剰な誇張や虚偽の実績
オンラインでは、少ない実績や経験でも、過剰に誇張することが比較的容易です。例えば、大企業で働いていたことを前面に出しつつ、実際の役職や成果はぼかす手法や、「成功した起業家にオンラインで教えた」という表現で、実際にはごく一部の事例を誇張することが一般的です。このような手法を用いて、実力や実績が不足していても、華やかな印象を与えることができます。
まとめ
オンラインでビジネスを立ち上げる際、実力や実績が乏しい講師でも、PDCAサイクルを回すことによって、短期間で結果を出し、信頼を築く手法を駆使することが可能です。これらの手法は、主に印象操作、低コストでのプロフェッショナルな見せかけ、SNSによる社会的証明、簡易なセミナー開催といった特徴に支えられています。しかし、これらは短期的な戦略に過ぎず、長期的な信頼性を構築するには、実力の向上と誠実なビジネス運営が必要です。