感情に訴えるマーケティングが問題視される理由は、主に以下の点にあります。特に、高額オンラインサロンや自己啓発関連のビジネスでは、感情を操作することで消費者を引き込む戦略がしばしば使用されますが、それが引き起こす潜在的な問題には注意が必要です。
消費者感情を煽るマーケティングの問題点
1. 考える時間や選択肢を与えず即決させる
感情に訴えるマーケティングとして、消費者の購買意欲を過剰に煽り、購入をせかす手口がよく見られます。「今すぐ行動しないとチャンスを逃す」「成功者は自己投資をしている」といったメッセージにより、冷静に考える時間を与えません。一時の感情で衝動的に高額商材を購入してしまうと、後悔や不信感、冷静に自分に合った商品を選べなかったという自己嫌悪など、結局マイナスの感情で終わってしまう可能性があります。
2. 短期的利益をはじめから狙い、売り逃げする
手口が周知され、法的規制がされるようになったら、別の手段に切り替える
感情に訴えるマーケティングは、しばしば短期的な利益を狙うために使われます。例えば、講座の「今だけ特別価格」「期間限定のオファー」などがその例です。こうしたメッセージは、消費者に急いで決断させ、長期的に本当に価値があるかどうかを吟味する時間を奪います。その結果、消費者は後になって「自分には合わなかった」「期待していた効果が得られなかった」と感じることが多く、満足度が低くなります。
3.消費者を依存させ、不安やプレッシャーを植え付ける
感情に訴えるマーケティングは、消費者の不安や恐怖、欲望を煽ることがあります。例えば、「今すぐこの方法を試さなければ遅れを取る」「成功できるのは限られた人だけ」など、消費者を焦らせる言葉が使われることがよくあります。
このような戦略は、消費者を不安にさせ、その不安を解消するために継続的な投資をするよう仕向ける場合が多いです。その結果、受講者が本当に必要とするサポートではなく、過度にプレッシャーを感じながら学び続けることになり、最終的に精神的な負担が大きくなることもあります。
4. 本質的な価値が見えにくくなる
感情に訴えるマーケティングが強調するのは、短期的な成果や感情的な満足感です。これにより、提供されているサービスや商品が本当に有益であるかどうかという本質的な価値が見えにくくなります。例えば、自己啓発や成功法則を売りにした講座では、表面的には「成功するための手段」を教えているように見えますが、実際には実践的なノウハウが不足していることが多いです。感情的にアピールすることによって、受講者は本当に自分にとって価値があるかを評価せずに参加してしまうため、結果として不満が残ることが多くなります。
5. 長期的な関係を築けない
一時的な熱狂で高額商材を買ってしまったことにより、後から冷静になった消費者は後悔、自責といった負の感情を抱きます。これにより、販売者との関係は一過性のものに終わることが多いです。先に述べたように、そもそも長期的な関係を販売者側は想定していない(売れればよい)場合も多いです。
サポートが不十分であったり、実用的な情報が提供されなかったりすると、顧客が離れてしまう可能性が高いです。感情に訴えただけでは、顧客が信頼を持ち続けることは難しく、リピートや紹介を生むことが困難になります。
6.購入者間に、不公平で理不尽な競争を助長する
感情に訴えるマーケティングが多く行われる業界では、「早く行動した者が得をする」「誰でも成功できるチャンスがある」というメッセージが強調されがちです。しかし、こうした戦略はすべての受講者にとって公平なものではありません。
参加者がそれぞれ異なるスキルやバックグラウンドを持ち、経験や適性も違っているにもかかわらず、ひとつの同じメソッドがすべてに効果があるというのは、理屈として考えにくいことです。個別の条件や目的を考慮せず、ひとつの価値観・方法が絶対と思い込んでしまうことで、コミュニティ内に不公平な競争が生まれます。一部の受講者だけが成功し、その他の人々が不当に挫折を感じることになります。
結論
消費者の感情を煽るマーケティングは、効果が高く一見とても良いものに見えるかもしれません。しかし、長期的には消費者からも信頼を失い、多くのリスクを伴うものです。効率を追い求め、短期間で成果を上げる価値観のみを強調し、即行動することや自己投資という名の購買活動を神格化することは、受講者が冷静に自分に合った選択をする機会を奪っているとも言えます。
また、利益を得ることを主な目的として感情を操作することが常になると、消費者にとってその商品の本質的な価値は何かという一番大切なことが見失われ、結果として満足度が下がることが多いのです。消費者の側も、冷静に自分のニーズを把握し、感情的な煽りに流されないことが重要です。