Kindle(キンドル)とは?自費出版できるアマゾンの電子書籍
Kindle(キンドル)は、Amazonが提供する電子書籍リーダーおよび電子書籍サービスの総称です。Amazonの「Kindle Direct Publishing(KDP)」というツールを利用すれば、自分の文章を誰でも電子書籍として自費出版できます。
電子書籍の自費出版は、ハードル低く自分の本を作れる方法として、今、文章愛好家の間で話題です。印刷コストがないため低予算で出版できるうえに、紙の本も作れて、世界中の読者に届く電子書籍の世界は、とても夢がありますよね。
電子書籍の自費出版:無料セミナー・コンサルティングが人気上昇中
電子書籍出版は、ときに、ライフワークの周知や事業の宣伝を目的として活用されることがあります。自分の思いをまとまった文章で紹介できるだけでなく、『本を出した』と言えばブランディングになり、一目置かれるからです。
ウェブメディアの特性を利用した他のマーケティングと同様、Kindleというメディアの性質を知りうまく利用して、より効率的・効果的に自身のKindle本を広める攻略法が『Kindleマーケティング』です。これは、特に無名の個人事業主やコンテンツメイカーが短期間で権威性を獲得し、支持を集めるための手法として注目されています。
そして、そのテクニックを指導するコンサルタントの無料セミナーも、連日人気を博しています。
キンドル出版は怪しい?:マーケティングは詐欺じゃない
Kindleマーケティングにおける手法や戦略は、予算を抑えて最初の実績を築き注目を集める手段として、非常に再現性があり有効なテクニックです。特に、志がある個人にとって、予算や知名度がなくても取り組みやすい選択肢の一つと言えるでしょう。無名の著者でも出版業界に参入しやすくなったことは、素敵なことだと個人的に思います。
さて、ウェブマーケティングはあくまで「テクニック」に過ぎないので、手法自体は良し悪しの話ではありません。問題は、中身が伴わないものを小手先のテクニックで売る行為です。こういった行為が横行すると、長期的には、ブランディングどころかマイナスイメージで電子書籍が見られるようになるのではないでしょうか。
最近では、ChatGPTを使って本を書く人も増えました。そこに、質の伴わないコンテンツを優良誤認・過大評価させる意図で、Kindleマーケティングのテクニックを組み合わせる。これにより、電子書籍業界全体のブランドや信頼性が失墜すると懸念されており、アマゾンをはじめとする大手電子書籍プラットフォーマーも対策を急いでいます。
事前知識:キンドルマーケティングの基本手順
以下のような手順が一般的です。
1.事前プロモーション(無料セミナー・イベント・SNS)
出版前に無料のセミナーやイベントを開催し、SNSで電子書籍を華やかに宣伝します。この段階で、『リザーブストック』などのファンマーケティング効率化ツールやLINE公式アカウントを活用し、潜在的な読者とフォロワーを獲得します。
2.無料ダウンロードキャンペーン実施
電子書籍のリリース直後に、期間限定で無料ダウンロードキャンペーンを実施します。このキャンペーンを利用して、『1.事前プロモーション』で獲得したフォロワーや既存のファンに一斉ダウンロードしてもらうことで、書籍が大量に求められた実績を作ります。
3.ジャンル別1位獲得の実績を複数作り、リアルタイムにSNSで実況する
キンドル本の登録ジャンルを変更しながら「部門別ランキング」で1位を取っていき、そのスクリーンショットをリアルタイムでSNS投稿します。著作を複数のカテゴリに登録し、リアルタイムで競合が少ないジャンルを探しながら選んで変更していくことで、部門別ランキング1位をたくさん獲得できるのです。上位に食い込んだ結果の画面をスクリーンショットしてSNSにシェアすることで、人気と権威性を演出します。
4.発売直後の短期間に評価コメントを集める
SNSやリザーブストックで獲得した見込み客にレビューを呼びかけます。レビューが増えることで、リアルタイムランキングでも高順位を取りやすくなります。書籍のダウンロードページに良いレビューが並べば、身内以外の第三者からも自身のコンテンツに興味を持ってもらえる可能性も高まります。
もちろん、本当に内容が伴っている、質の良い電子書籍はいっぱいあります。ファンマーケティング的な手法が悪いという意味でもありません。ですが、本自体を適当に出しておき、後から差し替えることもできますし、組織票で評価を集め、見かけ上の成功を収めることもできてしまうのです。
これらの手法によって、比較的短期間で「成功した電子書籍」という印象を作り上げることができます。実際、最初に自己の実績やスキルを誇大広告のレベルで大きく見せ、特にそのスキルにうとい初心者の優良誤認を狙って集客し、事業を実際に軌道に乗せる資金を集めながらPDCAを回す講師は存在します。
上記の記事では、そのような講師を見抜くためのひとつのヒントとして、ランディングページ(※1)やプレスリリース(※2)から、講師の実際のスキルや実績、優良誤認狙いを見抜く方法を提案しています。
※1『ランディングページ』:セミナー・サロンを宣伝するための簡易ホームページ
※2『プレスリリース』:イベントや新製品を告知するためのニュースレター
サクラ的レビューの特徴:怪しいコンサルを見分けるヒントにも
ここからは、コンテンツの質とレビュー内容が乖離した、特に小手先のブランディング目的の電子書籍にありがちな特徴について、先に説明したKindleマーケティングの性質をふまえて解説していきます。
繰り返しますが、初期にインパクトある実績を演出して注目を集めるマーケティング手法が悪いわけではありません。似た手法は、例えば、大手企業がリリースする新商品の食品などでも、使われていることがあります。わかりやすい例として、エスニック味の目新しいカップ麺や、限定スイーツを出す際、全国のコンビニにあえて少ない量を陳列しておき、売切れたら『品切れ続出!』とSNSでPRしたり、店頭に手書きの紙(とりいそぎ感の演出の場合がある)を貼るなど、有名な方法です。
ただし、上記の食品の例については、実際においしいもの(質が伴っている)で価格も相応、そして、そもそもの単価が高くて数百円でしょう。問題になるのは、中身が伴っていなかったり値付けが相場から外れていたりする場合、高額なのにキャンセルができない場合などです。これは、購入者本人が満足していたり、手口に気づいていなかったりする場合でも問題だと個人的には考えています。
Kindleにおいて、時に自己のコミュニティを高評価を得た書籍を見分けるためには、以下のポイントのチェックが有効です。
レビューのタイミングと具体性(具体的すぎる場合も注意)
まず、評価コメントが均一すぎる場合、注意が必要です。『良い評価をすればクーポンを差し上げます』といった特典で高評価を頼むステルスマーケティング(ステマ)的な手法が、以前はまかり通っていました。機械的に評価コメントをAIで作ったり、買うこともできました。内容に対する具体的なレビューではなく、例えば「素晴らしい!」「最高!」というような短文のコメントは、数が多くても信頼性に欠ける場合があります。
その一方で、初期に集中しているコミュニティメンバーからの評価が具体的で熱心すぎる場合も、注意したほうがよいかもしれません。書籍がリリース後すぐに多数の高評価を得ている場合、それが本当に読者の自然な反応なのか、ステマや購入した評価、著者のコミュニティの信者によるものか、確認する必要があります。特に、無料キャンペーン後に評価が急増した場合は要注意です。
とりわけ、なんらかのコミュニティを取り仕切っている講師の著書に対してこのようなレビューが見られる場合、一度確認することを推奨します。情報格差、コミュニティメンバーのファン化、講師のカリスマ化により、コンテンツそのものの質が正確に評価されていない可能性があります。
平均評点が異常に高い場合・レビュー件数が多い場合
平均評価が非常に高い(例えば、4.8以上)わりに低評価が少ない場合、その評価の偏りを疑うべきです。多くの意見が集まったときに、全員から高い評価を得ているのは不自然です。
低評価が極端に少ない場合、まず、★5の評価が適当、または発売直後の熱心すぎるコメントではないか確認します。先にも書きましたが、ひと昔前までは、レビューを買う行為もまかり通っていました。
星1と2の評価のみに絞ってレビューの内容を確認することも有効です。そして、熱心なコメントに集まる『参考になった』については、やはり身内のものである可能性が高いことも頭の隅におくとよいでしょう。
関連書籍としてサジェストされるキンドル本の評価と著者の素性
無料キャンペーン後に集中している評価のうち、引っかかるレビュー者の名前をクリックすると、その人自身も著者である場合があります。たどっていくと、コミュニティ内メンバーの電子書籍に同様の初期評価を集団で寄せている場合があります。そして、怪しいコンサルとつながっている人は、往々にして怪しい人々という印象です。
そのコミュニティを取り仕切る講師の電子書籍ではなく、コミュニティメンバーの著作の場合、大きく問題視しなくてよい場合もあると個人的には考えます。『食べログ』『Google』などで、お店やサービスをしている方のファンの方々が、応援の気持ちで評価を書くことは珍しくありません。
それが第三者からは『身内』とみなされる関係性であっても、同業・友人のよしみで、特に何か大きなイベントのときに互いに協力することは、それほどおかしなことではないでしょう。問題は、中身がないものをネットの性質を使って大きく見せ、判断材料を持たない人々を騙し、誘導するコンサルタントです。
紙の本・出版社=信頼性・質ではない
マーケティング手法による電子書籍の実績の見せ方を足掛かりに、オフラインの書店に平積みするところまで行く講師も中にはいます。Kindleには、ISBN付きのペーパーバックを作る機能も実はあるのです。
無名のセミナー講師の本ばかり取り扱う出版社も中にはあるので、出版社について調べ、口コミや実態、他の取り扱い書籍の著者について確認することも有効かもしれません。『出版社から出ている』事実を作り、権威性と品質を偽装する場合があります。
実際に読むと適当な文章である、あるいはAIで作った文章そのままである
レビューと書籍内容の整合性をチェックします。レビューが非常に好評であっても、書籍を購入してみた際に本のクオリティーが価格や触れ込みに見合わないことがあります。実際に本を読んでみて、あまりにも内容が薄すぎたり、支離滅裂な文章であったりする場合、良いレビューでもサクラ的な評価である疑いがあります。
Kindleでは、取り急ぎ適当な本を出しておき、後から原稿を差し替えることが実はできます。最近ではアマゾンもAIコンテンツを区別できる体制づくりを急いでいます。例えば、Kindle本に対しても、初版のみであってもAIを利用して作成したコンテンツには、AIタグをつけることを義務化しています。
上記の記事では、AIを活用した画像の細かいディテールから、講師の真のスキルを見抜くチェックポイントを提案しています。追って、AI生成の文章を見抜くポイントも記事にしたいと思っています。AIで書いた文章がほとんどである場合、それをチェックする方法があります。
文章をコピペすると、全体のうち何パーセントがAIで生成されたのか判別できるようなAIチェッカーを、ChatGPTをリリースしたOpenAIでさえも開発しているのです。そのくらい、AIコンテンツが無秩序に広まることには問題もあるということなのだと思います。
まとめ
Kindleマーケティングは、予算をかけずにブランディング・広報したい人にとって、非常に有用なテクニックです。
しかし、Kindleマーケティングにより、高い評価点や部門一位をとっているからといって、必ずしもその電子書籍に質が伴っているとは限りません。
過大評価された著者や、評価を操作した可能性のある書籍を見抜くためには、レビューの内容、タイミング、レビュー者をチェックすることが手掛かりになります。ある講師に興味があってキャンペーン時に書籍を無料ダウンロードした場合、本そのもののクオリティとレビューの整合性を確認することは、その講師が信用できるかどうかジャッジする基準にもなるかもしれません。身内やコミュニティ内の仲間だけでなく、時に自身のサロンの信者が良いレビューをするよう、巧みな印象操作で誘導することがあるからです。
結局のところ、小手先のマーケティングではなく、コンテンツそのものの価値が重要です。
長期的に顧客からの信頼を得るためにも、コンテンツの質と誠実な売り方が欠かせません。